100人100篇の日々と暮らし。
わたし達が寄り添いたいのは、ひとりとひとりの日々。そして、暮らし。
そこで、気になるあの人のご自宅や仕事場にお邪魔して、お話しを聞かせていただきました。その際、事前にSghrの製品を選んでいただき、実際に暮らしの中で使われた実感や感想をお聞きしました。暮らしの日用品であるSghrの製品は、職人のもとで生まれ、使い手の暮らしの中で育っていきます。

5回目の今回、取材させて頂いたのは、詩人・グラフィックデザイナーのウチダゴウさん。分野や領域をまたぐ、ユニークな活動に共通するもの。また、それが日々の暮らしの中で、どのように生まれ育まれるのか。ご自身でデザインされたという、長野県安曇野市のご自宅兼アトリエにてお話を聞きました。

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詩人・グラフィックデザイナー / ウチダ ゴウ

1983年生まれ。2009年、長野県松本市に、詩とデザインのアトリエ「してきなしごと」を開業。10代の頃から書き続けてきた詩を柱として、執筆・出版の他、店舗や事業主のネーミング、文字のハンドライティングなどを行う。また、活動の宣伝広告も自ら行うなかで独学でグラフィックデザインを習得、知識や技術にとらわれない、詩的なロゴやシンボルマークのデザインも手がける。全国各地で、朗読会や個展、アーティストや他業種とのコラボレーション企画を開催。近年は英国・スコットランドを第二の拠点とし、現地での執筆や朗読など、活動を広げている。雑誌『nice things.』の巻頭にて「詩めくり」連載中。2018年、北アルプスの麓にアトリエを移転。ギャラリー運営も始める。
https://shitekinashigoto.com

ウチダゴウさんのセレクト

グラスに注がれた一杯の水が、喉の渇きをうるおしていく。それとおなじように、一篇の詩が心をうるおしてくれることがあります。心が渇くということは、心をはたらかせている証し。心をはたらかせて、日々のさまざまな事に取り組むと、やっぱり自然と心は渇いていくのだろうと思います。そう考えると、詩もまた暮らしの日用品と言えるのかもしれません。そして、みんなにとっての詩よりも、わたしにとっての詩を見つけ、暮らしの傍らにおくことができれば、これほど心づよく、豊かなことはありません。ガラス職人がガラスを扱うように、詩人は言葉を扱います。まずはお聞きしました、ウチダゴウさんにとって言葉とは。

詩人の“してきなしごと”

「普段、僕らが使う言葉は、伝えようとしている言葉なんです。そうすると、言葉を受け取る側は、どういう意味だろうと考えながらその言葉を受け取るわけです。しかし、それと同じように詩の言葉を見聞きすると、伝わらないかもしれないですね」

言葉の意味を考えると受け取れないのが、詩の言葉。すると、どのように詩人は言葉を紡ぎ、どうやって読み手は受け取ればよいのか。詩人の数だけ詩の形があると前置きをしたうえで、詩にむかうウチダゴウさんの感覚をさらに聞いてみます。

「詩の言葉は僕の中で、描く。絵がいちばん近いかなと思っているんです。何かを伝えようと思っているのではなくて、ただただ描く。そして、わたしとあなたの間に置く。そんな感じですね。たとえば、一杯のコーヒーの美味しさということを考えてみると、僕はナッツの風味をこのコーヒーの良さと思ったけれど、受け取る人はその奥にある柑橘系の風味が良いと思っていたとする。普段の言葉であれば、ナッツの風味をこそ伝えるべきですが、詩の言葉はそうでなくてもいいんです。気楽というか、そこまで責任感がないというか(笑)。読み手が自分なりに受け取れる余地を残しているのが、詩の言葉」

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「たとえば、詩的なものが源泉となった絵なんかを見ちゃうと、やられたなぁ、おわりだなぁと思います(笑)。言葉の場合、どうしても受け取り手は考えてしまうけど、絵の場合はそれを軽く超えられるわけですから。絵で詩を描かれてしまうと、そりゃ敵いません」

活動の屋号は「してきなしごと」。理念は、してきなしごとかどうか。詩という形にこだわらず、その源である詩的な感性にこそ、詩人としての興味を向けつづけてきたウチダゴウさん。

「僕はグラフィックデザインの仕事もしていますが、詩を書くのとデザインをすることは違わないと思っています。昔はデザインの方が収入的にほとんどを占めていたので、分けて考えていた時期もあったのですが、だんだんと詩を書く機会も増えて、いよいよ詩が自分の軸になってきたので、じゃあデザインの居場所も詩の中につくろうと。そうすると、グラフィックデザインの方も面白くなってくるのではと思っています」

スコットランドの屋根裏部屋

8年間住んだ長野県松本市から、自らデザインした家を新たに建て、安曇野市に移り住んだのが昨年のこと。仕事場としてのアトリエ、ギャラリーまで併設されたこの家での暮らしを想い描くにあたり、ウチダゴウさんが参考にしたのが、スコットランドでの経験。

「英語での詩作に興味があって、2013年から定期的にスコットランドに行きはじめ、今では詩の朗読会などもするようになりました。いつも、現地の友人宅に滞在するのですが、ゲストルームが屋根裏部屋で、小さな出窓だけがあって、ちょうどよい暗さ。それがすごく気持ち良くて。いくつか滞在した家、すべてがそうなんです。夜もちゃんと暗い。シーリングライトも使わず。その人体的にも理にかなった心地よさがすっかり気に入ってしまって、この家は「暗いぐらいの家」という別称があるんですが、暗さがテーマ。困らない程度の暗い家にしようと。また、普通であればこういった森の中に住むと、窓を大きくとることが多いと思うのですが、うちは窓は小さく、そうすれば高気密高断熱にもなります」

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ちょうど良い暗さの気持ち良さ。それを知ったスコットランドの屋根裏部屋のゲストルームでの体験。だから、この家を建てるにあたって、まずいちばんに考えたのがゲストルームなのだそう。

「逆に彼らが僕の家に来たとき、そういったゲストルームがないとまずいじゃん。というのが理由の一つです。あとは、ギャラリーで展示をしてくれる作家が、ゆっくり在廊できるスペースになればなというのもあって」

そして今回、ウチダゴウさんにセレクトいただいた製品のひとつ、ナイトカラフェはまさにこのゲストルームに滞在するゲストのために、と選ばれたもの。

「これもスコットランドの屋根裏部屋のゲストルームでの体験なのですが、夜中、喉が渇いたときのために水差しとコップがさりげなく置かれていたんです。ヨーロッパは乾燥しているから、喉をうるおすものが必要なんでしょうね。この気遣いは良いなぁと。それで、うちのゲストルームにも欲しいなと思って探していたんです。しかもこれは、本体とコップが一体になっていて、さらに良い。水を出すというホスピタリティだけでなく、このモノ自体の良さでゲストに喜んでもらえるなと思いました。今、自分用のものを何色にしようか妄想しているところです(笑)」

もうひとつセレクトいただいた、ドルチェケーキカバー&プレートの中には、取材にあわせてウチダゴウさんが自ら焼いてくださったケーキが(ぴったり!)収まっています。このケーキ、日本ではあまり見慣れませんが、スコットランドでは定番のケーキだそう。

「スコットランドに行く前に、友人からスコットランドに行くなら、ダンディーケーキが美味しいから、ぜひ食べてみて。と薦められていました。ダンディーって、そのダンディじゃなくて、街の名前なんですね。それで、その街でたまたま寄ったカフェに、このダンディーケーキがあって食べてみたら、すごく美味しくて。これ日本ではあまり知られてないし、僕が焼いてたら楽しそうだなと思って、焼き方を覚えました。だから、ケーキはこれしか焼けません(笑)。このカバーは、把手の形状が楽しいですよね。普通、あそこはもうちょっと分かりやすくしてしまうと思うんです。ドアノブ風とかリングとかに。でもかといって凝りすぎていなくて、ちょうど良い加減が気に入りました」

帰る家ではなくて、いる家

「去年までいた松本の家は、すごく寒い家でした。冬場ヒーターをつけても室温が1℃とか。けど、この家の場合、高気密高断熱の家なので、冬でも一番寒くて12℃とか。それで、切り花もいけるんじゃないかなぁと思って、ちょっとずつ始めています。鉢植えのものと違って、切り花は余裕がないとできないじゃないですか。時間とかではなくて、精神的に余裕がないとできない。でも、この家に越してから、僕のなかで流れる時間がだいぶ変わって。ちょっと、切り花が楽しくなってきたんです」

そこで、セレクトされたのがガラスの花瓶、カルマ。水平に横に広がる面は、落ちた花びらを愛でる舞台。それにしても、もともとここにあったかのように空間と調和しています。

「製品の説明にもあったと思うのですが、落ちた花びらも愛でるというのを読んだときに、あ、面白いなと思いました。ドライフラワーは今みんなやるけれど、花びらが散って落ちたのもひとつの風景として楽しんで良いんだなぁと思いました」

ウチダゴウさんに、家での暮らしを聞くと、「楽しそう」とか「面白い」という言葉が頻繁に返ってきます。けれど、一般的には「やすらぎ」や「落ち着き」を暮らしに求める人が多いような気がしますが...

「それは、僕が自分の人生エンターティメントだと思っているからでしょうか...(笑)まぁでも、ここが帰る家ではなくて、いる家だからだと思います。この家で仕事をしてギャラリーで展覧会やリビングスペースでイベントなどもしているので、落ち着く必要もないし、誰かが来て楽しんでもらうことの方が多いですから。なので、誰かが来るので、切り花をしようとか、そういう感覚が大きいんですかね。そういうのが無意識に。もてなすというか。でも、単純に楽しいからなんですけどね」

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「僕、普段からずっと好きという対象があまりないんですよね」取材の途中、ウチダゴウさんがそう言ったことに、すこし考えさせられました。一見、ウチダゴウさんの仕事や暮らしは、ご自身の好きというこだわりが詰まっているような気がしたからです。でも、ずっと好きというものはない、と。ではどうやって、好きになるのかというと....「その瞬間です」。なるほど。ずっと何かを好きでいる自分というのはときに、今この瞬間の好きという気持ちを隠してしまうことがあります。好き、というこだわりが邪魔をする。でも、こだわるのではなく、好きという気持ちに素直に、軽やかに、淀みなく応えていく。もしかしたら、こだわらないということが、詩的なものを育んでくれるのかもしれません。最後に、ウチダゴウさんの「してきなしごと」のホームページに記載されている一文をご紹介したいと思います。

詩は、いつも、詩のまま。ただ吹くあの風のように、型にこだわらず、境界を超えて、目に見える姿をくるくる変えながら、わたしたちとともにあります。(shitekinashigoto.comより一部抜粋)

インタビュー 小谷実知世
構成 / 文 / 写真 山根晋
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