日本酒 × Sghr 酒器 Sghr Craftsman Interview

Glass  Suiko  Design by  Ryoma Kuwamasu

小さな器の中に、水の中の世界を閉じ込めて

― プロジェクトに参加したきっかけは?

この世界に入ったのは、ものづくりが好きだったから。アイデア出しから、実際に形にするまで、すべて自分で手がけるのが理想なんです。前から「コンペがあったら積極的に出そう」と常に思っていました。

― 選ばれた感想を聞かせてください。

もちろん嬉しいですけど、その反面、選ばれたからには責任も伴う。自分の作ったものが世に出る嬉しさと、プレッシャーの半々でしょうか。

Glass  Suiko  Design by  Ryoma Kuwamasu

―作品の発想はどこから?

個人的な話なんですけど、最近金魚を飼い始めたんです。最近流行っているアクアリウムって、水槽の中に小さな世界が広がっていて、それがすごくきれいなんですよね。ガラスでも、その小さな器の中に世界観を閉じ込められないか、と考えたのがきっかけです。器の泡は、水面に泡がわき上がるようなイメージでデザインしました。

―この泡はどのように作られているんですか?

実はこれ、すごく身近にあるものでできているんです。答えは重曹です。重曹の粉を付けて、ガラスを閉じ込めると、重曹の力で発泡するんです。技術は一般的なものですが、量をごく少量にすることで、繊細な泡を表現できました。

Glass  Suiko  Design by  Ryoma Kuwamasu

― この酒器をどんな風に使ってほしい?

まずは目で見て楽しみながら、お酒を味わってほしいですね。普通のグラスよりも、作る手間がかかっていますが、その分、ガラス製品としてのクオリティは高くなっています。それを知ってもらえたら嬉しいです。

― 今年で9年目だそうですが、今後の意気込みは?

今まではどちらかというと補佐的な役割が多くて、商品を一から作るのは今回が初めて。まだまだ下っ端なんです(笑)。ガラスには無限の可能性があると思っているので、伝統を守りながらも、新しいものを作っていきたい。
使い勝手がよく、なおかつ新しさのあるデザインを生み出せたらいいですね。

Glass  Kikka  Design by  Kenji Matsuura

異なる3つの器で、飲み比べを楽しんでほしい

― プロジェクトに参加したきっかけを教えてください。

この企画を知る前から、日本酒の器を作りたいと思っていて、自分なりに作品作りをしていたんです。そのタイミングで、たまたまこの企画があって、応募しました。

― なぜこのようなデザインにしたのでしょうか。

この器は、飲み口の輪郭が菊の花びらのような形になっているのが特徴。
単体で見せるのではなく、3つの器を組み合わせることで、ひとつの作品となるようなものを作りたかったんですよね。高さを揃えるんじゃなく、あえて段差をつけることで、重ねて収納したときに絵になるようにしました。

Glass  Kikka  Design by  Kenji Matsuura

― 作品のコンセプトは?

居酒屋に行くと、よく「利き酒セット」っていうのがありますよね。それは違う種類のお酒が同じ酒器で出てきて、味の違いを比べるというものですけど、この作品では、1種類のお酒を形の違う3つの器で飲み比べてみよう、というのがコンセプト。そうすることで、味や香りの違いを楽しんでもらえたらいいですね。

― サイズを変えたのはどんな理由からですか?

例えば夫婦で晩酌をするとき、それぞれ飲む量が違う場合もありますよね。そんなときに、旦那さんは大きい方、奥さんは小さい方を使って、もう一つにおつまみを入れる。そんな使い方もできるように、あえて違うサイズで作りました。

― 作品作りで心がけていることは?

使っているシーンが想像できることが大事。お店で商品を手に取った人が、「こうやって使いたい」とすぐイメージが湧くようなものが理想です。

Glass  Kikka  Design by  Kenji Matsuura

― 器の自然なラインはどのように作られたんですか?

工業製品ではきっちり機械で型を作りますが、それだと温かみが足りない。もっと手作り感を出したくて、型を手で作り上げました。側面を囲んでいる針金を手作業で曲げることで、1本1本に違うゆがみが出ます。それをガラスに移し込むことで、柔らかな表情が生まれました。
ただし、実際に型を作ってみて大変だったのが、切ってみないと輪郭がどうなっているかわからないこと。ガラスを吹いたら、その都度切って輪郭を見ながら、ここは出っ張りすぎ、ここは凹みすぎ……と一つ一つ調整していきました。ランダムなように見えて、実はこのゆがみも計算されているんです。

Glass  Kikka  Design by  Kenji Matsuura

― プロジェクトに対する思いを聞かせてください。

このプロジェクトでは、実物を見ないで、サイト上の写真だけで選んでいただく場合も多いと思います。そのため、いかに写真栄えする作品にできるか、という点も重視しました。バリエーションは6色あったのですが、パソコンで見たときに一番インパクトのありそうなブルーを選んでいます。

Glass  Kazemachi Design by  Ryuya Kato

ガラスの持つ柔らかなフォルムを表現

― 作品のコンセプトを教えてください。

酒器というと、ぐい呑みととっくりの組み合わせが多いですが、あえて片口の器を作りました。もともと、昔の日本酒は澱のあるものだったんですよね。それを飲むのに適しているのが、片口なんです。びんは注ぎやすいけど、逆さにしたときにどうしても澱が入ってしまう。対して片口なら、澱は底に沈んで、上澄みだけを注いで飲むことができる。そういう、昔の発想を今に再現したいと思ったんです。

Glass  Kazemachi Design by  Ryuya Kato

― 特徴的な形は何をイメージして作ったんですか?

僕はどちらかというと、かちっとした形よりも、柔らかな動きのあるものが好きなんですよね。だから、ガラスの柔らかな形をそのまま残したかったんです。形もよく見ると、真円にはなっていないんです。わざと曲げたりはしていませんが、自然に生まれた形を活かしました。

Glass  Kazemachi Design by  Ryuya Kato

― 作品づくりのポリシーは?

普段のプロダクトを作るときは、正確なものを作ることが求められます。だからこそ、自分の作品を作るときは、あまり正確性にはこだわりません。大きさも高さに多少の個体差があっても、それが味わいになると思っています。

― 今後、どんなガラス製品を作っていきたいですか?

芸術品というよりも、実際に手に取って、日常生活の中で使ってもらえる実用的な製品づくりがしたい。価格的にもそうでありたいですね。その中で、自己表現もできるのが理想。今回はそれを実現する良い機会だったので、またこういうチャンスがあったら、ぜひ挑戦したいですね。

Glass  Kazemachi Design by  Ryuya Kato

九十九里の工房内では、ガラス制作体験教室も行っております。
実際に多くの製品を製造しているこちらの「製造現場」で、皆さんにガラスの「熱さ」「やわらかさ」を感じていただける体験をしていただきます。お気軽にご参加ください。

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