写真家 加治枝里子さん

贈りものが気持ちをカタチにしたものだとしたら、あの人はどんな贈りものをするのだろう?たとえば、家族に、友人に、両親に。どのように言葉にできない想いを託す “もの” を選んでいるのだろう?シリーズ「あの人の贈りもの」では、ギフトシーズンだけでなく、もっと気軽でなにげない “日々の贈りもの” に込められた想いを紹介していきます。

今回、贈りものを選んでいただいたのは写真家の加治枝里子さん。世界各国を旅して写真を撮ってきた加治さんは、人に贈りものをするのが好きとのこと。家族や友人に旅先で見つけたものをプレゼントすることも少なくないそうです。そんな加治さんが外国に住む友人や大切な家族を想い選ぶ、ガラスの贈りものを紹介します。

加治枝里子(かじ・えりこ)
写真家。アメリカの美術大学で写真制作をはじめ、2006年にフランス・パリを拠点に写真家として独立。2010年より活動の場を東京に移し、現在は鎌倉を拠点に『TRANSIT』をはじめとした旅雑誌などで活動をすると共に作品制作を続けている。展示に北欧の白夜をテーマにした「夜がこない」(IDEE)、アイスランドを舞台にした「となりの惑星 ICE CREAM ON ICE PLANET」(Diakanyama Tsutaya)、「ストライプの光線」(テラススクエア)など。小学生と3歳双子の3児の母。
Instagram : @erikokaji

加治さんが雑誌『TRANSIT』の取材で訪れたフィンランドで撮影した、印象的な一枚の写真があります。それが、白夜のなか湖に飛び込んで遊ぶ少年を逆光で捉えた一枚です。透き通った美しい光が二人の少年を包み、そこに特別な時間があったことを想起させます。加治さんが長年愛用しているカメラはローライフレックスという古いフィルムカメラ。上から覗き込むようなファインダーを見させてもらうと、肉眼で見るよりも遥かに美しい光がそこにありました。

Photography by Eriko Kaji

オスロに住むノルウェー人夫婦の友達へ

「東京の小さなレストランでたまたま相席になった旅行中のノルウェー人カップルがいて、私が食べているご飯をじろじろ見ていたんです(笑)食べる?ってシェアしたらその日のうちにとても仲良くなりました。それから、今度はこちらからノルウェーに会いに行ったりして交流が始まり、かれこれ15年来の友達に。日本が好きでお酒が好きな二人なので、やっぱり和のものを贈りたいなと思って、徳利とお猪口を選びました」

ベルリンから一時帰国中の親友へ

「パリに住んでいた頃に日本から親友が遊びにきてくれて。彼女はパリからさらに足をのばして近隣諸国にも行ってみたいと言うので、旅先としてベルリンを薦めたんです。そして実際に行ってみたらとても気に入ったらしく、移住して現地でドイツ人の旦那さんまで見つけて。あのふとした会話からそこまで人生が進むのか!とびっくりしました。このカラフェを選んだ理由として、彼女は、庭でハーブや野菜を育てているので、ハーブウォーターなんかを作って、日常のなかで楽しんでもらえたらなと」

一緒にインドを旅した弟へ

「二つ下に弟がいるんですが、弟は私と違って真面目なタイプで・・・(笑)ちょっと仕事に疲れてしまった時期があったんです。そんな時ふと想いつき、インド旅行へ誘いました。当時2歳だった娘との3人旅で、今考えたら荒療治だったなあと(笑)。何もない砂漠のような所にベッドがぽつんと置いてあって、ここが今晩のホテルだからと言われて…!さすがに私も、ええぇという感じだったんですが、案外弟はそれが良かったらしく。今はすっかり元気になって仕事も頑張っていて、結婚もして幸せな家族に囲まれている弟におめでとうの気持ちを込めて贈りたいなと選びました」

構成 / 文 / 写真 山根晋
2024年8月
Sghr ARCHIVE