早く目覚めた朝、静かな夜明けの空のような色。
大人の深みや渋みが漂う色。
雨降り前の、湿りを帯びた空気のような色。
Sghrの色には、そこから浮かぶさまざまな感情や、
記憶を呼び起こす何かがあります。
その中でも、ひと際季節や情景を意識させる色。
それは冴えわたった淡いブルー。
夏が始まると恋しくなり、秋になる頃には心の片隅へ。
そっと静かに収まるようなその色は、
夏の記憶や儚さを思い起こさせます。
ブルーの色に残る記憶を辿る、夏のよみものです。
Sghrの工房からすぐ近く、九十九里浜の
ひと夏をおさめた写真とともに、お楽しみください。
幼い頃、絵の具やクレヨンで絵を描くとき、空の色といえば迷わず水色を手にしていた。刻々と変わる空の色は、濃い青だったりちょっと灰色がかっていたり。曇りのないスカイブルーのような瞬間に出会うことは意外と少ないのに、でも思い浮かべる空は、いつだってあの水色一色のように思う。今日見上げた空は、そんな記憶のままの水色の空。晴れ渡る空を、数羽の鳥が羽ばたく。澄みきった夏の水色の空を飛ぶことは、どれだけ気持ちがいいことだろう。
うだるような暑さに乾いた喉を潤そうと、グラスに氷を3つ、そして炭酸を注ぐ。シュワシュワという音と、カランと鳴る氷の音が心地よい。炭酸の泡が織り成す、グラスの中の小さな海を見ながら、どこまでも透き通る青い海に飛び込みたいと想像する。ひんやり冷たく、絶え間なく生まれる泡に包まれながら、ただその青く透明な世界に浮かぶ。その妄想と、そして爽快な炭酸を、喉を鳴らし、ぐいっと飲み干していく。
夏の昼下がり、窓から差し込む光りに照らされた部屋で、ゆっくりと本を読む。部屋を吹き抜ける風が揺らすカーテンに、さそわれるように目を向けた先の、窓の額いっぱいに広がる風景に心奪われる。澄んだ青い空と、厚く輪郭のはっきりとした夏雲が、風に乗って流れている。光りや風の匂い、遠くから聞こえる子どもたちの遊ぶ声。わたしは今、夏を背景にして、本の世界に浸る。
ビールに合うグラスはクリアーと思っていた。色付きのグラスに何色のドリンクを入れてもいいのだけれど、最も美しいのはクリアーだと。ある時、「ブルーのグラスにビールを入れてごらん。とてもきれいだから」と言われて注いでみたら、透明なブルーのグラスと、黄金色のビールの境い目の、色と色が溶けあう瞬間のような、なんともいえない美しさがあった。思い起こしてみれば、青い空と向日葵のように、青と黄色のコントラストは、爽やかで明るく、力強くて逞しい。夏には欠かせない色と色。いつものビールが、より美味しかった。
ハーズプレート
ツートーンカラーの器は、お料理の背景としての器の可能性をひろげてくれます。
広くて大きな海と青空がひろがる千葉県九十九里浜の近くに、Sghrの工房はあります。この夏のおでかけに、ぜひお越しください。ガラス製品が生まれる瞬間をご覧いただけるだけでなく、ガラス体験(小学生以上のお子様も対象)や、多くの製品が陳列するファクトリーショップ、緑に囲まれた居心地の良いカフェで夏のひとときを。
※PCサイトからのみの対応になります
文 江草乃利子
構成 / 写真 山根晋
2019年8月