100人いれば、100篇の日々と暮らしがある。わたし達が寄り添いたいのは、ひとりとひとりの日々。そして、暮らし。そこで、気になるあの人のご自宅や仕事場にお邪魔して、お話しを聞かせていただきました。その際、事前に Sghr の製品を選んでいただき、実際に暮らしの中で使われた実感や感想をお聞きしました。暮らしの日用品である Sghr の製品は、職人のもとで生まれ、使い手の暮らしの中で育っていきます。
今回お話しをお聞きしたのは、神奈川県二宮町で雑貨店「日用美」を営む、浅川あやさん。日用品のセレクトショップとして、生活にまつわるさまざまなアイテムを扱っています。ご自宅とお店は併設されており、暮らしと仕事が境目なく繋がる、そんな日々を過ごされているとのこと。光が綺麗な冬の晴れた午前、ご自宅でお話しを伺いました。
浅川あや
内装設計施工会社、インテリアショップなどを経て独立。神奈川県二宮町にて、全国各地からセレクトした日用品の店「日用美」を営む。
https://nichiyobi365.wixsite.com/nichiyobi
「二宮は町がきらきらしてますよね」
浅川さんのご自宅の開放感に溢れるリビングに腰掛け、大きな窓の外をぼおと眺めていると、いつだったかバーの店主に聞いたそんな言葉を思い出しました。
きらきらと美しい光が空間に満ちていて、竹藪越しに室内に落ちてくる陰影を追いかけると、壁には一枚の大きな絵画が。浅川さんが18歳のときに手に入れた作品とのこと。数十年の時を経ても、今もなお豊かなイメージを伝えてくる雰囲気を感じます。
「自然の素材感を大切にしています。その方が時間が経った時に綺麗だから」暮らしにおいて浅川さんが大切にされている考えです。
まず、事前に選んでいただき、実際に浅川さんが暮らしの中で使われた Sghr の製品について、選ばれた理由や感想をお聞きします。
ひとつめはテーブルの上で存在感のある、フラワーベースの〈アルテミス〉について。
(浅川さん)「これは口が窄まっているので活けやすいですね。それと、うちは冬に薪ストーブを焚くので、加湿もできるという機能が良いなと思い選びました。いつも庭の花や植物を家のなかに活けていて、これは庭に自生しているヤブニッケイという植物です」
(浅川さん)「色はシックなものが好きで、カーボンブラックと悩みましたが、植物を活けたときによりなじみの良い色と思い、フォレストグリーンにしました、結果良かったですね」
映えるのではなく、なじみが良いということ。その感覚が浅川さんなんだなと思います。自然、あるいはそれを用いた素材感を大切にされた空間や家具、それとのなじみの良さでモノを選ばれているとのこと。続いて、〈ナイトカラフェ〉について。
(浅川さん)「私は毎日ちょこちょこ水を飲むんですけど、水筒や空いたペットボトルとかではなくて、こういったものが見た目に良いですよね。サイズも一人分という感じでちょうど良く。お店に立つ時もお客さんとたくさんお喋りするので、お水は必須です」
器作家さんの個展や取り扱いも多い日用美。素敵だけど、自分が暮らしのなかでは使わないだろうなというものはお店には置かないという基準。そんな浅川さんがちょうどこのような形を探していたというのが、ガラスの器〈カタクチ〉です。
(浅川さん)「いわゆる片口の形状で多用途に使えるものをちょうど探していました。陶器のものは持っているのですが、そればかり手にとってしまうので。これにヨーグルトとかドレッシングを入れたりして使ってみて、気に入っています。あとは息子が好きな白玉だんごとか。きなこをかけて。この片口の注ぎ口もスプーンなどがちょこんと引っかかるので使いやすいですね」
日用品のセレクトショップを営む職業柄、モノ選びのプロである浅川さん。前述したように、お店で扱うものは自分が実際に暮らしのなかで取り入れたいかどうかが基準。その時に大事な感覚の一つが、違和感ということ。
「実際に使ってみて違和感がある場合、その感覚を覚えておくんです。何か言葉にはできないけど違和感がある。それで、その次に使ったときにも違和感がある場合は、自分が使うものではないのかなと気付くんです」
感覚的ですがとても正直な違和感というものさし。それはモノ選びに限ったことではありません。以前、日用美は鎌倉の住宅地にありました。その時も自宅とお店は同じ建物で、1階をお店に2階と3階をご自宅とされていたそうです。しかし敷地内にお庭がないこと、土がないことにある日違和感を感じた浅川さんは、その違和感が毎日続くのでこれは引越そうと思い立ち、見つかったのが二宮町の今の場所でした。
「鎌倉のときは用途があって使えるものを紹介しなくてはと思っていましたが、今はたとえばアートのようにはっきりとした用途がなくても暮らしに大事なものもあるのだから、と自分の間口が広がった気がします。それはやっぱりこういった大らかな場所だからかなと」
「わたしオンオフないので、ご飯作ってても思いついたらちょっとお店の方に行って作業しちゃったりします(笑)」と笑う浅川さん。でもだからこそ、遠方からもお客さんが絶えない日用美のユニークさがあるのだと思います。
(浅川さん)「あくまで暮らしがベースにあるお店なので、ただうつわ屋としてモノを置くだけでなく、器もあるし洋服もあるし鞄もあるし照明もあるし、カーテンなんかも紹介する。そして大事にしているのは、その作り手の背景とともに伝えるということですね」
背景を伝える。それがとても説得力があると感じるのは、この日用美というお店のすぐ背景に浅川さんの暮らしがあるから。作り手だけでなく伝える人の背景までも、まるごと伝わってくるお店なんだろうなと感じます。
(浅川さん)「このリビングから見える朝焼けがとても綺麗で、まだ誰も起きてこない時間にコーヒー淹れたり、この箒でちょっと掃除して、そんな時間が好きですね」
とたんにその箒が気になりました。