わたしの手。
いそがしく何役もこなし、けっこう無理もして、ときには怪我もします。
アタマからの指示で働くだけでなく、
ココロの代役を演じることもあります。
そんな、わたしの手が、すこしびっくりして
喜ぶような、持ち心地のよいグラスを紹介します。
居ごこち、着ごこち、座りごこち。
暮らしのなかに、ぜひ、持ちごごちも。
まるで、ガラスの中に親指が入り込んでいるような感覚が楽しいグラス。ソファなどに深く腰掛けて、すこし不安定な状態でも、ぴったり手から離れません。たとえば、部屋を暗くして、映画鑑賞をする時のお供にも。もしかしたら、映画が終わるまで、このグラスを持ち続けることになるかもしれません。
じっくりと熱を加えてできる「溜まり」。ガラスが溶けることでできるこの「溜まり」に、指をはめたときのフィット感を、ぜひお楽しみください。
思わず両手で包んでしまうような、優しい丸み。手のひらから伝わってくる、その優しさに、心まで優しい気持ちになれそうです。飲み物を入れなくても、いいんです。心が疲れたとき、棚からそっと取り出して、両手で包んでみてください。グラスがじんわり、温まってきます。
窪んでいるほうが持ちやすいと思っている方ほど、触れて体感していただきたいグラスです。手でつくる丸みに、グラスがぴったりとなじみます。
ガラスと向き合い、54年。熟練のガラス職人、塚本衛が生み出した傑作ロックグラス。「こう動きたいというガラスの声が聞こえて、自然と生まれた」と塚本は言います。作為を超えた境地であらわれる、重みと曲線の美しいハーモニー。底に溜まったガラスのいのちを、掌で感じてみてください。
ガラスならではの美しい曲線。そして手から伝わる重厚感。二つのバランスが絶妙なグラスです。ガラスの奥深さをじっくりと味わえます。
ダイヤモンドのような美しいテクスチャーを持つこのグラスは、思わず触って確かめたくなるような、好奇心にかられます。実際に手にとってみると、直線的で複雑な凹凸が手の関節ごとに気持ちよく収まります。ダイヤモンドは着飾るためのものですが、こちらは触って、使うダイヤモンドです。
どんな飲み物でも楽しめますが、お勧めはウォーターグラス。水を入れるとまるでカットが施された宝石のよう。見た目も美しく、口当たりも良いように厚みにもこだわっています。
手にとって、もっとも親しい友人と言えるのが、このグラスかもしれません。いつでも、どこでも、どんな飲み物を入れても、持ち心地の良さを与えてくれます。でも、考えてみれば、当然のことなのかもしれません。なぜなら、このグラスは手から生まれたものですから。
型を使わず、ガラスの自然な動きを利用して作られるこのグラスは、手がひとつとして同じでは無いように、たったひとつの「揺らぎ」を生み出します。
構成 / 文 / 写真 山根晋
2019年7月