ガラスの新しい可能性を追い求め、想いを込めた2025年の新コレクションをご紹介します。
数量限定の希少な休止品を紹介する、オンラインショップを公開しています。
ほっとする甘さとともに風土の食や季節感を
長きにわたり伝えてきたものや、
工芸的ともいえる繊細な美しさを持つものなど。
和菓子はわたし達にとって、身近かつ奥深い存在です。
そんな和菓子との組み合わせにおいて、
ガラスの器はひとあじ違った表情を見せてくれます。
今月のSghr magazine / 日々の暮らし。のよみもの では、
特別なひとときに味わいたい
温故知新な三種の和菓子とともに、ガラスの器を紹介します。
手で木の実を摘み取るさまを表す「采」の字をもとに、美しい色彩という意味を込めて「采衣(さい)」と名付けられたお菓子。季節毎に厳選された4種の野菜と1種の果実はじっくりと丁寧に蜜漬けされ、仕上げに和三盆糖をまぶして、できあがります。この時季は、人参、牛蒡、しめじ、蓮根、林檎が選ばれました。噛むほどに、素材本来の味わいが広がります。
最も古い和菓子の形は、果物や木の実であると言われています。この時季の「采衣」に選ばれている、牛蒡やしめじ、蓮根までもがお菓子?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今から千年以上前の記録にも、朝廷に納めた「菓子」として、蓮根が記されています。そんな、時を超えて和菓子の原型を味わうような「采衣」を、ガラスの舞台のような『ロングアシエット』に丁寧にしつらえ、素材の味をゆっくり味わう時間を演出。あるいは、まるで宝物のように、毎日少しずつ『センシティブ』の中に盛られた「采衣」を楽しむ、なんていかがでしょうか。
「パンにあう和菓子」との依頼があり、うまれた羊羹。無花果の実のつぶつぶ感、胡桃の幾何学模様、苺の赤が黒い羊羹をキャンバスにまるで抽象画のように現れます。餡の甘さとフルーツの酸味が調和し、そこにラム酒が加わることで大人の味わいに。深夜、ワインのお供にいただく。そんな至福の時も味わえそうです。
羊羹は中国の点心にルーツを持つ和菓子で、漢字にあるように、もともとは羊の羹(あつもの)つまりは羊肉が入った汁物のことを言いました。それが鎌倉時代の日本に伝わり、羊肉のかわりに小豆や大豆などを練って成形した蒸し物となり、徐々に甘味を持つようになったとされています。そのような、長い歴史を持つ羊羹に、ドライフルーツや胡桃、ラム酒などのいわゆる西洋菓子のエッセンスを入れ込んだ「ドライフルーツの羊羹」は、東西の食文化を混ぜ合わせた、温故知新な和菓子と言えそうです。ガラスの『バターケース』であれば、この羊羹の芸術的な断面も眺めて楽しむことができます。また、ガラスの器としての美しさが際立つ『テッラ』には、さまざまな羊羹を切り並べても楽しそうです。
テッラ
丸いシェイプを大地に見立てたプレートは、存在感と瑞々しさがあります。艶のあるフラット面は、まるで水の中を覗いているかのような、ガラスの美しい表情をご覧いただけます。
春と秋のお彼岸だけでなく、一年中楽しめるおはぎをつくる「タケノとおはぎ」。もち米を餡でくるめば、おはぎ。という自由な解釈が、さまざまに個性を持った、おはぎを生んでいます。また、毎日のメニューも旬の素材をつかって、日替わりというのも楽しみのひとつ。ほっとしたい時に、おはぎを年中楽しめる幸せ。
お彼岸の供物や、ハレの日の和菓子として長らく親しまれてきた、おはぎ。小豆の赤色は魔除けや邪気払いに効果があると信じられたのがその由来のようです。また、春秋のお彼岸それぞれに、牡丹の花に見立てた「ぼたもち」、萩の花に見立てた「おはぎ」と呼び名が変わるということから、季節の移ろいに心を寄せた人々の感性を伺うことができます。そんな、おはぎの“進化系”と称される「タケノとおはぎ」の楽しいおはぎを、全くタイプの違う二種のガラスの器に載せました。まるで漆器のようで、よく見るとガラスの艶めきが光る『かなざわ』は、おはぎとの相性の良さは言うまでもありません。また、エッジの効いた四角い形状が、おはぎの工芸的な側面をより引き立たせる『アンプ』は、器というよりも額縁と言えるかもしれません。
構成 / 文 / 写真 山根晋
2019年1月